たかべーの書庫

ラノベの読書記録。

10年代で面白かったライトノベル10選

大したこと書いてないブログですが気が付いたら10年分くらい読書記録が溜まっていたので、2010年代の各年から面白かったラノベを一作選んで10選にまとめてみました。
どちらかといえば、読み終えた直後の評価よりも、今になって強く印象に残っているものを重視しています。なお他人におすすめできるかは一切考慮していません。

【2010年】朝田雅康「二年四組 交換日記 腐ったリンゴはくさらない」


交換日記の形式で綴られる、あるクラスの物語。最初はクラスメイト35人の名前が伏せられており、読み進めながら誰が誰なのか解き明かしていくというパズル要素も持った実験的な作品です。
ただし、それを差し引いても35人にキャラクター付けして群像劇させる作風は私の大好物で、とても楽しみながら読めました。そして35人描き分けたイラストレーターもすごい。
惜しむらくは活躍が多くなかった登場人物もいたことで、続刊が出ることに期待してたのですが、続刊どころかこの一冊のみしか作者の作品が出版されませんでした。別名でもいいので何かの形で執筆を続けてくれてたらいいのですが。

その他の候補作。
中里十「君が僕を 4」
・壱日千次「社会的には死んでも君を!」
十文字青「絶望同盟」

【2011年】川原礫ソードアート・オンライン 7 マザーズ・ロザリオ


SAOはマザーズ・ロザリオが最高傑作だと思ってる派です。剣と仮想の世界に現れた、最強の剣士の物語。多くは語るまい、読み終わった後はしばらく余韻に浸りきっていました。

その他の候補作。
比嘉智康神明解ろーどぐらす 5」
櫂末高彰夢魔さっちゃん、お邪魔します。 1」
・神尾丈治「パンツブレイカー
・健速「六畳間の侵略者!? 7.5 白銀の姫と青き騎士 第一章」

【2012年】秋目人「乙女ゲーの攻略対象になりました…。」


一番迷ったのがこの年で、迷ったら知名度がなさそうなほうということで選びました。
今でこそ乙女ゲー転生物が山のように出ていますが、この作品はなろうで乙女ゲーが流行った最初期とほぼ同じ時期に、なろう経由でなく書き下ろしとして出版されたものです。ラノベの杜で調べたら乙女ゲーがタイトルに付いた最初の出版作品でした。
攻略対象として死亡ルートが満載の乙女ゲー世界に飛ばされてしまった主人公が、本来のゲームの主人公であるヒロインに攻略されることを回避しようと奮闘するお話です。主人公が男でヒロインのライバルキャラ複数と交流するのでギャルゲー的でもあります。
このヒロインのライバル達がいいキャラで、個人的にはレベル五の美声を持つ法条さんがお気に入りでした。あと騎士プは癒し。
ちなみに2巻で打ち切りですつらい。出る時代が違っていたらもうちょっと巻数出てたのかなぁと思います。

その他の候補作。
遠藤浅蜊魔法少女育成計画
小木君人「森の魔獣に花束を」
かじいたかし僕の妹は漢字が読める 5」
渡航やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 6」
・野崎まど「2」
至道流星羽月莉音の帝国 10」

【2013年】岡本タクヤ「僕の学園生活はまだ始まったばかりだ!」


岡本タクヤといえば、ファミ通文庫から傑作ボーイ・ミーツ・ガール小説「千の剣の舞う空に」とともに彗星の如く現れ、彗星の如く去っていってその後4年間音沙汰が無く、「武装中学生」のノベライズ作家として舞い戻り、2013年に5年半ぶりのオリジナル新作を出した、この時点では一部のコアなファンに人気の作家でした。なおその後ガガガ文庫に移って書いた「異世界修学旅行」がヒットして中堅作家として活躍しています。
「僕の学園生活はまだ始まったばかりだ!」は、そのクズさ故に友達を失いぼっちになった主人公高橋くんが腹黒ヒロイン佐藤さんと出会い、謎の部活高橋部を作って佐藤さんが学園の覇権を握るために暗躍するお話です。一人称垂れ流し文体と溢れんばかりに詰め込まれたネタのコラボレーションが素晴らしかったです。主人公とヒロインが両方ともダメさを醸し出しているのに、それをコメディに昇華してこちらが笑いの発作を引き起こされる最高の読書体験でした。ラーメン部と蕎麦部と講道館柔道と探偵と死体と忍者と高橋部が登場するライトノベルは「僕の学園生活はまだ始まったばかりだ!」だけ!

その他の候補作。
・十階堂一系「赤村崎葵子の分析はデタラメ」
・ウスバー「この世界がゲームだと俺だけが知っている 1」
・長谷川也「セクステット 白凪学園演劇部の過剰な日常」

【2014年】稲葉義明「ルガルギガム 上 黄昏の女神と廃墟の都」「ルガルギガム 下 運命の〈王〉と帰還の門」


上下巻でまとめて一作としてカウント。私的2010年代ベスト表紙です。
現代の高校生だった主人公が飛ばされた異世界風の古代メソポタミア。ニューヨークの警官、戦国時代の野武士、十字軍帰りの騎士。この世界には歴史上の様々な時代から飛ばされてきた人間が多数居て、もとの時代に帰るために、女神のヒロインや現地人と協力して廃都バビロンで遺跡荒しします。平野耕太の「ドリフターズ」に微妙に被っていますが、作者も言うように書こうとしているものは異なり、ドリフターズが歴史上の英雄の物語なのに対し、ルガルギガムはもとの時代ではただの人だった無名の英雄たちの物語なのです。
遺跡を攻略するにあたり、主人公もそれなりに強化されてますが、ベースは現代人なので戦闘は基本命懸けで熱いです。現代に帰りたい主人公と、それを素直に応援できないヒロインの関係性がもどかしくも応援してしまいます。そして何より世界観が素晴らしく、脇役のキャラクターにも背景が作りこまれてて、その世界に生きているという感覚がありました。本編ではその世界観の一部しか暗示されず、壮大な世界の一部を切り取った感じがして想像の幅が広がる物語でした。

その他の候補作。
三枝零一ウィザーズ・ブレイン VIII 落日の都 <下>」
・みかみてれん「勇者イサギの魔王譚1 夢の始まりを始めるために」
浮世草子「最新のゲームは凄すぎだろ 2」

【2015年】桜山うす「コートボニー教授の時をかける花嫁」


新人賞受賞作の一作目「コートボニー教授の永続魔石」に続く二作目です。1巻の時点で傑作ファンタジーラノベで工学ラノベで人妻ラノベですが、2巻では傑作SFラノベと妹ラノベにもなります。
ヒロインで小人でロリババアでおまけに人妻の攻略不可能キャラ。そんなコートボニー教授に巻き込まれたり巻き込まれなかったりで、序盤から方向が定まらないのに、物語が進むにつれ永続魔石とは何だったのかと言わんばかりにさらに混沌としていくストーリーが最高です。膨大な設定の一部だけ漏れ出てきたみたいな描写がたまりません。
2巻の目玉は、25000年の未来から『現実世界』が侵略しに来るのをセーブ&ロードで対抗するという心が沸き立つタイムリープの共演。しかも主人公はタイムリープせずに対抗する側で、機転を生かして立ち回るのが痺れます。そして最強の妹ちゃんがぐうかわ。
万人におすすめではありませんが、平行世界の私には全力で読ませたい大傑作。私的2010年代最高傑作に選んでいいくらいの作品で、この10年で唯一アンケートを出した本でしたが、打ち切られました。打ち切られました。おのれ許さんぞオーバーラップ文庫……!!!

その他の候補作。
比嘉智康「たまらん! メチャクチャな青春ラブコメに巻き込まれたけど、生まれてきてよかった。」
宇野朴人ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン VII」
林トモアキミスマルカ興国物語XII」

【2016年】城平京「雨の日も神様と相撲を」


これまで読んだカエル相撲小説の最高峰。そしてオンリーワン。
城平京は作家あるいは漫画原作者としてコンスタントに良作を出していますが、これもその例に漏れない面白さです。
相撲に愛されながらも体格に恵まれなかった少年が、引っ越した先の村の名士の娘から相撲を教えるよう乞われて巻き込まれた非日常の物語。
ボーイ・ミーツ・ガールとして素晴らしく、特に後半の話の転がり方はすごかったです。

その他の候補作。
柳野かなた最果てのパラディン I 死者の街の少年」
・割内タリサ「異世界迷宮の最深部を目指そう 6」
・あずまの章「堀川さんはがんばらない」
村上凛おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ! 15 大学生編」

【2017年】比嘉智康「キミは一人じゃないじゃん、と僕の中の一人が言った」


ギャルゴ!!!!!」「神明解ろーどぐらす」「たまらん!」などで琴線を直撃してきた比嘉智康の2年越しの新作が面白くないわけがない。
多重人格の少年少女が主人公の青春恋愛物。10年前に交流したクラスメイトの多重人格達は、再会したときには消えてしまっていた。そして消えてしまった人格の夢を叶えようとする裏に隠れた心情に胸熱です。比嘉智康作品を読んでて毎回思うのですが造語センスに光るものがあります。てきてよ。数ページ毎に涙腺が緩んで何気ない日常ですら愛おしかったです。
どうしたら比嘉智康がこの世界に評価されるのか。こんなにも面白い本を出す作家が現状丸2年も新刊を出していないなんてラノベ界の損失でしょう。もっともっと評価されてほしいです。

その他の候補作。
・和久井透夏「おめでとう、俺は美少女に進化した。」
・岩関昂道「アイドル稼業、はじめました!」
・わるいおとこ「俺の現実は恋愛ゲーム??かと思ったら命がけのゲームだった」
ヤマグチノボルゼロの使い魔22 ゼロの神話」

【2018年】赤木一広「無双系女騎士、なのでくっころは無い」


実をいうと読んだのは2019年です。こんなにも面白い作品ならもっと早く教えてほしかった。
謀略で窮地に陥った王子が一騎当千の二人の見習い女騎士に助けられて始まる物語。王子が二人に振り回されるのかと思ったら、朱に交われば赤くなり、死にかけながら千倍の敵に切り込んでいくバトルファンジー。戦場を駆けるその姿は一騎当千悪鬼羅刹。戦闘描写は近年読んだ中でも屈指で、読んでいて心が沸き立ちました。
特に王子が可愛いんですよ。この物語は強い王子と強い女騎士と超強い女騎士二人が出てくるんですが、強い王子と強い女騎士の実力は同じくらいで、砦を攻めるのに女騎士が出来た壁の蹴り登りが出来なかった王子はすごい悔しがるんですよ。お可愛いこと……! ちなみにハーレム設定みたいなのに全員脳筋なのでラブコメ成分はないに等しいです。
こんなにも面白い物語を打ち切ったGAノベルは無能過ぎるのではと悲しみに暮れました。私は発売日に買ってなかった無能読者ですが。
Web版で完結してくれた作者には感謝しかないです。

その他の候補作。
・かばやきだれ「はぐるまどらいぶ。 1」
宇野朴人「七つの魔剣が支配する」
・鴨野うどん「外れスキル【地図化(マッピング)】を手にした少年は最強パーティーとダンジョンに挑む 2」

【2019年】渡航やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 14」


俺ガイルは問題を斜め下の方法で解決するのが象徴的となった6巻の評価も高いのですが、やはり最終巻がふさわしいだろうということで14巻を選びました。
たった一言が言えずに遠回りする彼彼女らのその不器用さが愛おしいです。終わるのが寂しくなりながらページを捲り、終盤では、こいつらっ、こいつらってごろごろ転がりながら読んでました。短編集はよ!

その他の候補作。
伊藤ヒロ異世界誕生 2006」
汀こるもの五位鷺の姫君、うるはしき男どもに憂ひたまふ 平安ロマンチカ」
・ざっぽん「真の仲間じゃないと勇者のパーティーを追い出されたので、辺境でスローライフすることにしました 4」



以上です。
気になる人がいれば各年で面白かった本のまとめもどうぞ。
2010年のまとめ
2011年のまとめ
2012年のまとめ
2013年のまとめ
2014年のまとめ
2015年のまとめ
2016年のまとめ
2017年のまとめ
2018年のまとめ
2019年のまとめ
次の10年もラノベ読み続けてたいです。