2013年に読んだ小説は386冊でした。年400冊が目標だったのですが、達成できませんでした。きっと艦これのせいです。おのれ艦これめっ。
レーベル別の内訳は以下の通りになりました。電撃はむしろ積極的に買ってない記憶すらあるのですが、刊行点数が多いせいか気付いたら結構読んでました。ファミ通、ガガガ、HJ辺りは好みの作風が多く、新作も高確率で買っています。GAの半分近くは一気読みした織田信奈でした。富士見F、スニーカー、MF等は特に意識してませんでしたが2012年よりやや少なめだったようです。SDを読んだ量が半減してるのは例年より刊行点数が減ってるのと関係あるのかないのか。一迅はもともと少なかったのがさらに三分の一に減ったので、来年はもうちょっと新作発掘をがんばりたいです。2013年に創刊されたレーベルもいくつかありましたが、オーバーラップはちょくちょく買っているのに対して、NMGは買ってないというか最近全然新刊が出てないのはどうしたことでしょう。富士ミスの後継になるかと期待していたのですが。その他新レーベルや少女小説系は全然追えてないです。
電撃文庫 | 44冊 |
ファミ通文庫 | 41冊 |
ガガガ文庫 | 32冊 |
HJ文庫 | 29冊 |
GA文庫 | 27冊 |
富士見ファンタジア文庫 | 24冊 |
角川スニーカー文庫 | 21冊 |
MF文庫J | 20冊 |
ハヤカワ文庫JA | 16冊 |
講談社ラノベ文庫 | 14冊 |
集英社スーパーダッシュ文庫 | 13冊 |
このライトノベルがすごい!文庫 | 12冊 |
メディアワークス文庫 | 11冊 |
オーバーラップ文庫 | 10冊 |
星海社FICTIONS | 9冊 |
ヒーロー文庫 | 8冊 |
エンターブレイン(単行本) | 6冊 |
アルファポリス(単行本) | 4冊 |
スマッシュ文庫 | 4冊 |
講談社BOX | 4冊 |
NMG文庫 | 4冊 |
一迅社文庫 | 3冊 |
コバルト文庫 | 2冊 |
C★NOVELSファンタジア | 2冊 |
その他 | 26冊 |
さて、では2013年で良かった本を挙げていきたいと思います。
タイトルにはラノベと書きましたが、ラノベかどうか怪しいものも含まれています。あくまで2013年に読んだ本なので、刊行が2012年以前のものもあります。トップ以外明確な順位付けはしていないですが、上にあるもののほうがお気に入り度が高めです。
例年の如く数の制限をあまり考えずに脳内審査を通過したものを全て載せていったら初めて50作を超えてしまいました……。まあ平均して週に一冊はここに載せるぐらいの当たりを引いたと前向きに考えておきましょう。
2013年のまとめ
岡本タクヤ「僕の学園生活はまだ始まったばかりだ!」(ファミ通文庫)
2013年ベストラノベ。
岡本タクヤといえば、第9回えんため大賞に傑作ボーイ・ミーツ・ガール小説「千の剣の舞う空に」とともに彗星の如く現れ、彗星の如く去っていってその後4年間音沙汰が無く、「武装中学生」のノベライズ作家として舞い戻り、この度2013年に5年半ぶりのオリジナル新作を出した、主に私の脳内などで人気沸騰中の作家ですが、その新作こそが「僕の学園生活はまだ始まったばかりだ!」です。
「僕の学園生活はまだ始まったばかりだ!」は、そのクズさ故に友達を失いぼっちになった主人公高橋くんが腹黒ヒロイン佐藤さんと出会い、謎の部活高橋部を作って佐藤さんが学園の覇権を握るために暗躍するお話です。一人称垂れ流し文体と溢れんばかりに詰め込まれたネタのコラボレーションが素晴らしかったです。主人公とヒロインが両方ともダメさを醸し出しているのに、それをコメディに昇華してこちらが笑いの発作を引き起こされる幸せな読書体験でした。一冊で綺麗にまとまっているのですが、続きがあるなら是非読みたいです。
十階堂一系「赤村崎葵子の分析はデタラメ」(電撃文庫)
これは推理小説ではなく、分析小説です。
分析部部長の赤村崎葵子がメインとなって日常の謎をのらりくらりと分析し、語り手の加茂君がツッコミます。べつに出した答えが間違っててもいいよね、だって推理小説じゃないし、といわんばかりのスタンスなので、必ずしも分析で真実が語られるとは限りません。その分析を各話の最後にヴィルヘルムさんが補足してくれます。そんな感じで読者になるほどと思わせていたら、後半になるにつれて分析が加速度的に面白くなってきて、後書きの後のおまけに至ってそれまでをひっくり返してくれる真骨頂。このおまけこそが本編です。
石川博品「後宮楽園球場 ハレムリーグ・ベースボール」(スーパーダッシュ文庫)
2013年には一部のラノベ読みに大人気の作家、石川博品の長編ラノベが2作出たのですが、その一つは真の意味でのハーレム小説でした。。
野球の巡業で身を立てていたセリカン人が興した帝国で、主人公の海功は後宮に女装して潜り込み、スルタンの暗殺を目論みます。そして野球をします。野球です。後宮ではスルタンの寵を争うため、帝国中の美少女たちが野球で競っているのです。だからメインは女同士(主人公女装してるけど)の友情やら陰謀やら野球やらです。スルタン? 完全に脇役ですね。最初は見慣れない名詞が多くてちょっと取っ付きにくかったですが、読めば読むほど味が出てくるのが石川博品。異国情緒溢れる世界観や野次の飛ばし合いとかも含めた野球の雰囲気がかなり好きです。この一巻で終わるのも石川博品らしいですが、構成的に考えると「ネルリ」以来のシリーズ物になりそうな感じなので、続きを楽しみに待ってます。
石川博品「ヴァンパイア・サマータイム」(ファミ通文庫)
「後宮楽園球場」では可憐な女たちが固い肌色の棒を手で握りしめ力強く速く振り、白いものを柵より遠くに飛ばして点を入れるスポーツを題材にした一方、こちらの「ヴァンパイア・サマータイム」は石川博品が描いたド直球の恋愛物です。
序盤はお互い想像上の相手を美化して思い悩んでいるのに悶え転がっていたのが、終盤になると気持ちがが近寄ったり離れたりしてるのに心をブンブン揺さぶられてました。そしてハッピーエンドともバッドエンドとも言い切れないラストには不思議な読後感が込み上げて来ました。これぞ石川博品。
長谷川也「セクステット 白凪学園演劇部の過剰な日常」(このライトノベルがすごい!文庫)
2013年もいろんな新作が出てきましたが、会話劇というスキルに全振りして楽しませてくれたのが「セクステット」です。
男一人女五人の演劇部の部室でただ駄弁っているだけなんですが、これがまた笑えること笑えること、素晴らしいギャグのテンポでした。特にメインで会話を回している先輩トリオが好きですね。パロネタに頼らずに笑いを生み出してる点も好ポイントです。
大森藤ノ「ダンジョンに出会いを求めるのは間違っているだろうか」(GA文庫)
ダンジョンRPG風ファンタジー。
神様が市井で生活してる世界観がいいですね。主人公のベル君は、チートスキルのおかげで爆発的強くなっていきますが、その強くなる過程がちゃんと描かれているのが高評価です。好きな女の子のために強くなろうとするのが男の子って感じがして好感も持てます。ただまあベル君は一途なんですけど周りの女の子が放っておかないので結果的に全方位ハーレムルートになっちゃってます。ちなみに私はヘスティア様推しです!
赤月カケヤ「俺が生きる意味 1 放課後のストラグル」(ガガガ文庫)
閉鎖空間に閉じ込められ、超常生物から逃げ惑うサスペンス物。
容赦無く人が死んでいく展開に読んでいる間中わくわく感が止まりませんでした。如何に知恵を絞って化け物に立ち向かおうにも呆気無く覆される絶望感と焦燥感が素晴らしいです。続刊でも面白さは変わらず、予想を裏切り期待に応えてくれるステキ仕様でした。
琴平稜「勇者リンの伝説 Lv.1 この夏休みの宿題が終わったら、俺も、勇者になるんだ。」(富士見ファンタジア文庫)
ファンタジー学園ラブコメ。
勇者学校で勇者になれなかった主人公が語り部となって、代わりに勇者になったポンコツ幼馴染に振り回されるお話です。この作品の最大の特徴はどこまでも突き抜けてやると言わんばかりのノリの軽さとテンポ。karoryさんのイラストもグッドです。個人的にはサブキャラのニーナとジルにくっついてほしいんですけど脈が無さそうなところが残念です。
小川一水「天冥の標 6 宿怨 PART3」 (ハヤカワ文庫JA)
去年、1巻から一気読みした大河SF。
凶悪な伝染病と戦うことになった人類史の描写は凄いの一言。巻を進むに連れて一巻で提示された謎が徐々に明かされていきます。お気に入りの巻は、ここまでやってくれたかと喜んだ中盤までのクライマックスVI-3と、徐々にお互いの心が繋がっていく過程が良かった性愛SFのIVです。
ジョージ・R.R. マーティン「氷と炎の歌 5 竜との舞踏 1」(早川書房)
5年ぶりの新刊がでた大河ファンタジー。
陰謀とか策略とか裏切りとかがわんさかと詰め込まれていてすごい好きです。題名の氷と炎を象徴する二人の主人公格が未だに出会ってすらいないのに面白いです。ファンタジーとして素晴らしいクォリティなのですが、もうちょっと、その、刊行ペースを早くしてもらえると……。
淺沼広太「ぜんぶ彼女に「視」られてる? 3」(ファミ通文庫)
あのふわふわした会話が最高だったというのに!
個人的にラノベ不思議少女四天王の一人に認定していた八神さんのシリーズが終わってしまったことに悲しみを禁じ得ないです。「カロリーは美味しいです」は記憶に残る名言でした。「7秒後の酒多さんと、俺。」もそうでしたが、どうやら淺沼さんの青春モノは私の好みにどストライクのようなので、またこの路線で書いてほしいです。
村上凛「おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ! 8」(富士見ファンタジア文庫)
オタリアの楽しみ方は、現在進行形で黒歴史を生成中のカッシーを見て、呼び起こされたトラウマに心臓を握りつぶされること。
……だったのですが、巻を重ねるごとにカッシーがちょっとずつ成長していってるのが見れて何よりです。でもまだ心臓にくること多いけどね! 7巻ラストから8巻前半ではついに物語を前に進ませる一歩を踏み出したカッシーを見れてゴロゴロ転がってしまいました。ここまで読んできて良かったとともに、今後の展開がどうなるのか悩ましいです。
ウスバー「この世界がゲームだと俺だけが知っている 1」(エンターブレイン)
Web小説で流行っているらしいゲームの世界に飛ばされるという設定を少し捻って、Onlineと題していながらMMOどころかMOですらない一人用クソゲーの世界に飛ばされるお話。
ひたすらゲームをやり込んだことで培ったバグと仕様の知識を駆使して攻略してく展開が面白かったです。バグでピンチになり、バグを駆使して攻略する爽快感がいいですね。2巻ではNPC視点になっている外伝もありましたが、こちらは主人公が置いてきたキャラが何を考えていたのかフォローされていて良かったです。
春日みかげ「織田信奈の野望 10」(GA文庫)
現代の高校生が姫大名が活躍する戦国時代に飛ばされた戦記物。
1巻だけ読んでその後ずっと積んでいたのですが、この度一気読みしました。何でもっと早く読まなかったんだ!というくらい面白かったです。時代考証無視のアイテムをギャグに使ったかと思えば、心を震わせる台詞が随所に散りばめられており、主人公の成長度合いも目覚ましいです。歴史をなぞりつつも独自の道に突き進もうとしている物語の行く末が楽しみです。
伏見つかさ「俺の妹がこんなに可愛いわけがない 12」(電撃文庫)
読書中に放心したのは久々でした。
シリーズ完結。私の俺妹は187ページで終わってしまいましたが、そこまでの描写が素晴らしく、選ばれなかったヒロインの慟哭を見てる時にはほんとにゾクゾクしました。
平坂読「僕は友達が少ない CONNECT」(MF文庫J)
現在のところマイ・ベスト・はがない。
本編では覆い隠されていた登場人物の内面が吐露されており、特に理科視点は胸にくるものがありました。また短い登場ながらも羽瀬川母のアイリさんの破壊力はすごかったです。
遠藤浅蜊「魔法少女育成計画 limited (後)」(このライトノベルがすごい!文庫)
魔法少女同士が殺し合うこのシリーズ、「limited」では三勢力の魔法少女が入り乱れての戦いとなりました。
どんなに強い魔法少女でも死ぬ可能性があり、戦わない魔法少女でも戦う魔法少女に能力の相性と組み合わせ次第で勝利できる世界観が、バトル描写に読み応えをもたらしてくれます。歴戦の強者である魔法少女達が闘う高揚感とそして死ぬ喪失感。たまりません。
渡航「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。 8」(ガガガ文庫)
マイ・ベスト・俺ガイルは6巻ですが、8巻はそれに次ぐ面白さでした。
八幡のマイナス方向の問題解決力と、それを認められない雪ノ下と由比ヶ浜。手詰まりに近い状況の中で解決策を考え、それでも苦さを残したラスト。この空気感が素晴らしかったです。
健速「六畳間の侵略者!? 12」(HJ文庫)
青騎士が絡むと読むテンションがレベルアップする六畳間。
ヒロイン全員が恋愛に命懸けてもいいくらいの心意気になったので面白さもひとしおです。一番応援してるのはゆりかですが、遅れてきたヒロインこと全力で捨て身な真希ちゃんが好きすぎてつらいです。
林トモアキ「レイセン File6:三人きりのフォース」(角川スニーカー文庫)
2013年林トモアキ枠。
「お前らがクソ野郎かッ――!!」と「いるだけで、ありがたい」が名シーン。最近のレイセンはデフォルトでヒデオが格好良いので、読んでいて胸熱です。
犬村小六「とある飛空士への誓約 2」(ガガガ文庫)
これから読む人はとりあえず2巻まで読みましょう。
1巻冒頭から裏切りが示唆されていたはずだったのですが、油断していたら死角から爆弾を投げ込まれた2巻でした。その展開は予想してなかった……。現在は4巻まで刊行中ですが、これからどうストーリーが転がるのが、期待に胸が高鳴ります。
幹「神様のお仕事」(講談社ラノベ文庫)
突然神様になってしまった高校生が日常の小さな悩みを解決するお話。
全三巻祝完結。派手さはないけど綺麗にまとまってて少し心が暖かくなれる、そんなラノベでした。シリアスパートも良かったですが、どちらかというと日常パートにこそ真価があると思いました。地味なタイトルですが、大賞受賞作の名に恥じない出来だったので、次回作にも期待です。
春日部タケル「俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している 6」(角川スニーカー文庫)
ついに甘草君の過去が明かされた6巻。
これまでで一番構成が良かったです。そう来るかと思わず唸ってしまいました。ギャグラノベのはずなんですが、ラブコメ展開でもふらのを見ていると胸が苦しくなって涙腺が緩んでくるので、やはりこの子を応援していきたいと思います。
櫛木理宇「ホーンテッド・キャンパス 死者の花嫁」 (角川ホラー文庫)
大学のオカルト研究会を舞台にした恋愛要素のあるホラー物、じゃなくてホラー要素のある恋愛物。
どヘタレの主人公森司君と何考えてるのか読みにくいヒロインこよみちゃんの牛歩の歩みの恋愛模様が描かれます。もどかしいけど微笑ましいんです、この距離感。4巻目ともなると、最初はヘタレだった森司君もたまにはこよみちゃんに格好良い行動が取れるようになってきました。そう、たまには。基本ヘタレなのは変わってないです。そこがいいんですけどね。
十文字青「灰と幻想のグリムガル level.1 ささやき、詠唱、祈り、目覚めよ」(オーバーラップ文庫)
ウィザードリィ風ファンタジー。
主人公補正など無きに等しい初期ステータスで雑魚敵にも苦戦する序盤から始まります。油断したら死ぬという雰囲気が出てる中、話運びはゆっくりで、劇的に強くなったりしないのですが、その分成長が感じられると嬉しいですね。
かっぱ同盟「僕の嫁の、物騒な嫁入り事情と大魔獣」(アルファポリス)
没落貴族の主人公が王命で結婚されることになったのは旧魔王の娘。
無垢で無邪気な新妻のベルルがひたすら可愛いのを見てゴロゴロするためのお話でした。うきゃー。
壱日千次「ひきこもりパンデモニウム」(MF文庫J)
壱日千次作品は、前作の「社会的には死んでも君を!」が超好きだったので、しばらく新作が出ないのを残念に思っていたのですが、ついに出ました!
本作は退魔師モノ。シスコンとブラコンで両方変態。ギャグのセンスがツボに入って笑っていたら、家族描写に不覚にもうるっとくる場面があってやっぱり壱日せんせー好きだわぁと再確認しました。
水野良「グランクレスト戦記 虹の魔女シルーカ」(富士見ファンタジア文庫)
ついつい暴走しちゃう天才魔法師シルーカと彼女の主君テオを中心とした国盗り合戦。
小さな領地を奪うところから大国と戦争するまでが一巻に濃縮されたスピード感と、短いながらも濃い人間関係の描写が良かったです。現在2巻まで刊行中ですが、個人的にはスピード感のある1巻のほうが好きです。
沙藤菫「彷徨う勇者 魔王に花」(C★NOVELS ファンタジア)
敵対する種族の魔王と勇者の恋愛物。
真っ直ぐな主人公には好感が持てます。魔王一家が良いキャラしてるのもありますが、瞬間的にだだっと甘くなったり、うるっときたりして面白かったです。
杉原智則「聖剣の姫と神盟騎士団 III」(角川スニーカー文庫)
ファンタジー戦記+ダンジョン攻略。
巻を重ねるごとに面白くなってる気がします。ダークが詭弁を弄して敵を翻弄していく様を見るとこれが英雄の資質かと思わせてくれます。どう見ても詭弁なのに無駄に格好良く見えるからすごいです。
暁なつめ「この素晴らしい世界に祝福を! あぁ、駄女神さま」(角川スニーカー文庫)
読んでて楽しいRPG風ファンタジー。
基本ゆるい雰囲気とコメディなノリで溢れてて頭空っぽにして読めます。主人公も意外に頭を使って活躍してるのと、周りから信頼されてる感じが好きです。
カルロ・ゼン「幼女戦記 1 Deus lo vult」(エンターブレイン)
世界大戦へと突き進む架空のヨーロッパに性転換されて転生させられたターニャちゃん。
本人は出世して後方勤務で安穏としたいのに、生来のねじくれた性格と神様の悪意により前線に放り込まれ英雄へと祭り上げられていきます。次はどんな展開が待っているのか楽しみです。
棺悠介「引きこもりたちに俺の青春が翻弄されている」(一迅社文庫)
かつて救ってくれたヒロインは引きこもりになっていた。から始まるラブコメ。
奇をてらった話ではないですが、主人公・ヒロインともに好感が持てて読んでて心地良かったです。新人賞からこのレベルの作品が出てくるとは、一迅社文庫も侮れませんね。
芝村裕吏「マージナル・オペレーション 05」(星海社FICTIONS)
最終巻まで鈍感を貫き通すのか。
と、ハラハラしてましたが、ジブリールちゃんが喜ぶような形になってよかったです。ちなみに同作者の「この空のまもり」では、マジオペの登場人物の未来がちょっとだけ見れるので、そちらもおすすめです。
芝村裕吏「遙か凍土のカナン 1 公女将軍のお付き」(星海社FICTIONS)
マジオペが完結したかと思ったら新シリーズ。
マジオペのアラタの先祖と思われる男がロシアの隣で国作り。新田の家系は波瀾万丈ですね。始まったばかりですが、どんな話になるのか楽しみです。
十階堂一系「不完全ナックル」(メディアワークス文庫)
同作者の「赤村崎葵子の分析はデタラメ」が大当たりだったので読みました。
こちらは女子校で空手部を立ち上げた初心者3人+経験者1人+名マネージャー1人の青春物。会話運びがうまいというか何度も笑いを禁じえない場面がありました。2巻で止まってるみたいですが、もう続きでないんでしょうか?
竹岡葉月「パナティーア異譚 1 英雄のパンドラ」(ファミ通文庫)
小五のときに異世界に勇者として召喚されて、高二になって2周目。
主人公とヒロインの関係性が鮮やかな青春の一ページみたいな感じでがよかったです。一巻完結として綺麗にまとまってるように見えるのですが、続きがあるらしいんですね。期待半分不安半分です。
江波光則「スピットファイア 魔術師スカンクシリーズ 2」(星海社FICTIONS)
基本暴力やらセックスやらドラッグやらが溢れている「魔術師スカンクシリーズ」。
特に2作目は交わされる会話が絶妙に軽妙でこれまでの江波光則作品の中で一番笑ってしまいました。利香子ちゃんの登場場面が少なかったことだけが残念です。
田代裕彦「魔王殺しと偽りの勇者 1」(ファミ通文庫)
魔王殺しの下手人を捜す異世界ファンタジーミステリー。
初っ端から魔王が死んでおり、殺したと主張する人間が4人。主人公の女騎士は魔族の男と協力して下手人を捜す旅に、という話の切り口は新鮮でした。謎解きのほうは私でもなんとなくわかるくらいの難度でその分話運びも丁寧で安定してました。
安井健太郎「アークIX 1 死の天使」(講談社ラノベ文庫)
もう十数年前のことになりますが、私が人生で初めて買ったライトノベルこそ安井健太郎「ラグナロク」です。残念ながらラグナロクのほうは続刊が絶望的な感じになってしまいましたが、作者のほうは去年講談社ラノベ文庫から新シリーズ「アークIX」をスタートしました。
未来の巨大人工都市でニンジャマスターが疾駆するバトル物。超人的な主人公と、それよりも超強い敵、これぞ安井健太郎! といった感じのスピード感のある戦闘シーンが詰め込まれていてテンションが上りました。今度こそ完結まで見守っていきたいです。
松岡万作「もえぶたに告ぐ 〜DRAMATIC REVENGE STORY〜」(HJ文庫)
女装男子の主人公が女体化したドSの男幼馴染に復讐するべく、籠絡しようとして逆に振り回されるという斜め上の設定ですが、これが面白かったです。
登場人物は基本的に裏の顔を持つ人間ばっかなのですが、私の心を癒してくれるのはやっぱり美命ちゃんみたいな子ですね。あの視線がたまらないです。ところでそろそろ2作目も出ていい頃なんじゃないかと思いますよHJ文庫さん。
渡瀬草一郎「ストレンジムーン 宝石箱に映る月」(電撃文庫)
「パラサイトムーン」の10年ぶりの新作。
前作の内容は随分と忘れてしまいましたが、それでも問題なく読める面白さでした。もちろん中には覚えてるキャラクターもいて、あの子がこうなったのかーと感慨にふけったりできました。
神野オキナ「疾走れ、撃て! 8」(MF文庫J)
対対話不能生物戦争物。
主人公・ヒロインとは別に、その教官の恋愛もこのシリーズでは書かれているのですが、これまで陰ながら応援してた加藤教官がついに・・・! という感じの8巻でした。でもですね、結局あの後どうなったのか気になって仕方ないのです。あとここ最近年1冊ペースの刊行なのですが、もうちょっとペースを短くしてもらえると嬉しいです。
むらさきゆきや「覇剣の皇姫アルティーナ IV」(ファミ通文庫)
去年、1巻から読み始めた異世界戦記物です。
書痴の軍師レジスが皇姫アルティーナ率いる辺境軍の元で頭角を現していきます。4巻は登場人物を一新してハイブリタニア編。本編とはまた違った性格のキャラで構成されてて、特にマーガレット様の悪女ぶりが良かったです。
本編とは関係ないですが、冒頭に前回のあらすじを書いてくれるのは、忘却系ラノベ読みとして非常にありがたいです!
高野小鹿「彼女たちのメシがマズい100の理由 3」(角川スニーカー文庫)
メシマズ幼馴染ヒロインの料理が巻を重ねるごとにカオスになっていく、もとい改善しようとする意思だけはあるのを見守っていくお話です。
1巻を読んだときはネタを続けられるのか心配だったのですが、2巻3巻と来て、メシマズがちゃんとテーマとして成り立ってるのと、主人公と幼馴染がどう向き合うかというのを描かれているのがツボに嵌まりました。
なめこ印「俺がヒロインを助けすぎて世界がリトル黙示録!? 7」(HJ文庫)
魔法使いやら超能力者やら異世界人やら宇宙人やらといったヒロイン達の力を上手く使って厄介事を解決するお話。
7巻はヒロインを2チームに分けて新ヒロイン4人の物語を解決する試みで、謎が謎を呼ぶ展開でこれまでで一番面白かったです。
森川智喜「キャットフード 名探偵三途川理と注文の多い館の殺人」(講談社BOX)
化け猫や魔法といったファンタジー要素のある現代世界で名探偵三途川理がある意味活躍するシリーズです。
通算で3巻出てるのを去年一気読みしました。特に1巻の前半部分が好きで、殺そうとする猫側と殺されまいとする猫側の頭脳戦が面白かったです。
田代裕彦「蒼天のサムライ 第一章 端琉島脱出戦」(オーバーラップ文庫)
騎竜と戦闘機が飛び交う空戦メインの架空戦記。
時節挟まれる後世から見た視点の描写が結構好きなんですよね。冒頭で結末が提示されているのですが、そこに向かって登場人物の各々がどう歩んでいくのか楽しみです。
話とは関係無いですけど、"駆逐艦"みたいな軍事用語が艦これをやっていたおかげでわかるという思わぬ副次効果がありました。
若桜拓海「リア王! 2」 (HJ文庫)
目指せ学園征服。
何やってるのかよくわからない部活を作るラノベは数あれど、そのネタを使い捨てるラノベは珍しいと思いました。主人公こんだけハイスペックならもっと他にやることあるだろ! と思う反面、大言壮語を吐くなら行き着くところまで行ってほしいですね。リア王五虎将は深月推しで。
ところで新刊のお知らせがまだ見当たらないんですけど、ちゃんと出るんですよね?
竹宮ゆゆこ「ゴールデンタイム外伝 二次元くんスペシャル」(電撃文庫)
本編で読んでいる部分はますます人間関係がどろどろとしてきてどこに着地するのかわかんない「ゴールデンタイム」ですが、二次元くんが主人公の外伝も面白くて本編より好きなくらいです。
痛みで心が削られていく感覚を味わいつつ、今ならまだ引き返せるぞ!と二次元くんに呼び掛けながら読んでました。秋ちゃんも可愛いですが愛可ちゃんはマジ天使でした。
大楽絢太「BIG-4 5. ぼくの名前は山田。気づいたら四天王が好きになっていました。」(富士見ファンタジア文庫)
魔王軍に潜入して駄弁ったりゲームしたり四天王選手権したりするゆるい雰囲気だけど、時たま熱い展開になるのも好きなシリーズ。
……だったのですが、気がついたら完結してました。恋愛関係とかもうちょっと進めてくれないかなーと思っていたのですが残念です。
総評
挙げたのをレーベル別に分けると、ファミ通7、スニーカー5、ガガガ4、富士見F4、電撃4、HJ4、MF3、星海社FICTIONS3、このラノ2、GA2、オーバーラップ2、講ラノ2、エンターブレイン2、SD1、一迅社1、MW1、講談社BOX1、ハヤカワJA1、早川書房1、アルファポリス1、角川ホラー1、C★NOVELS1、でした。2012年に比べたらばらけたような印象です。
2012年までのまとめも一緒に見ると、「魔法少女育成計画」、「レイセン」、「ドレスな僕がやんごとなき方々の家庭教師様な件」と「ぜんぶ彼女に「視」られてる?」、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」、「俺の脳内選択肢が、学園ラブコメを全力で邪魔している」、「マージナル・オペレーション」が2年連続、「おまえをオタクにしてやるから、俺をリア充にしてくれ!」、「やはり俺の青春ラブコメはまちがっている。」が3年連続で挙げていました。まほいくとオタリアと俺ガイルは高確率で2014年のまとめでも挙げそうな気がします。
2012年のまとめで挙げたのでその後続刊の音沙汰が無いのは「乙女ゲーの攻略対象になりました…。」、「2」、「パンツブレイカー」、「暗号少女が解読できない」、「勇者には勝てない」、「DRAGONBUSTER」、「虚構推理」辺りでしょうか。中には続刊出すつもりがなかったものもあるかもしれませんが、明らかに続きがある素振りだったのに打ち切りになると最終巻すら出ないラノベ界の風習はなんとかなってほしいものです。他には、かじいたかし、森橋ビンゴ、七沢またり、辺りが新刊の話が聞けなくて残念な作家さんです。新刊が出ないといえば、去年の4月にヤマグチノボルさんが亡くなられました。もう「ゼロの使い魔」の続きを読めないかと思うと残念でなりません。
2013年のまとめに話を戻すと、イチオシはやっぱり「僕の学園生活はまだ始まったばかりだ!」ですね。他の方のベストラノベ記事をいくつか見ましたが、そんなにこのタイトルを見かけなかったのでやはり推していかねばなるまいと思いました。
一部のラノベ読み、あるいはネルリストに大人気の作家、石川博品の長編が2作も読めたことは僥倖でした。今年もこのペースで新作を出してほしいですね。
このラノ文庫は一昨年の「魔法少女育成計画」、去年の「セクステット」と毎年なかなかの新作を出してくるので侮れないです。
「赤村崎葵子の分析はデタラメ」は2巻が出たあとツイッターで見かけるまで全然注目してなかったので、自分のアンテナが錆び付いてたことを痛感しました。その他、今年は一迅社、C★NOVELS辺りのレーベルをもっと読んでいこうと思います。
既存作品に目を向けると、「俺の妹がこんなに可愛いわけがない」を始め、いくつかの作品が完結しました。現状、始まる物語よりも終わる物語のほうが少ないと思ってるので、ちゃんと完結してくれると嬉しいですね。
今年も素晴らしいライトノベルに出会えることを期待してます。